第7回 「解雇予告・解雇予告手当の支払時期について考える―条件付採用職員の場合を中心として―」
はじめに
前々稿(法務の雑記帳第5回)では、地方公務員法(以下「地公法」といいます。)第58条第3項と労働基準法(以下「労基法」といいます。)第20条・第21条との関係について検討し、地方公務員に対する免職処分についても、原則として労基法20条の「解雇予告」の規定が適用される、という点を確認しました。また、前稿(第6回)では、懲戒免職処分との関係で、労基法20条1項ただし書の「労働者の責に帰すべき事由」と、解雇予告除外認定の問題について検討しました。
そこで今回は、少し場面を変えて、条件付採用期間中の職員を勤務成績不良等を理由として免職する場合について、労基法20条・21条の「解雇予告のルール」がどのように適用されるのか、とりわけ「いつまでに解雇予告をし、あるいは解雇予告手当を支払わなければならないのか」という、やや実務寄りの問題を考えてみたいと思います。
この問題を考える上でポイントになるのが、労基法21条4号です。同号は「試の使用期間中の者」については解雇予告の規定を適用しないとしていますが、同条ただし書により、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には、原則に戻り、労基法20条が適用されることになります。なお、厚生労働省は、ここでいう14日は出勤日数ではなく「暦日数」であるとしています(注1)。この「14日」という短い期間が、地方公務員の条件付採用の場合、とりわけ条件付採用期間が原則1月とされている会計年度任用職員の場合には、重要な意味をもつことになります。
(注1)厚生労働省・茨城労働局「労働基準法のあらまし(解雇制限、退職時の証明)」は、労基法21条に定める解雇予告の適用除外期間について、「上記の期間は、いずれも暦日数である」としています。
地公法22条は、職員の採用をすべて条件付のものとし、その職において6月の期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式なものとなるとしています。一方、会計年度任用職員については、地公法22条の2の規定により、この「6月」が「1月」と読み替えられています(注2)。そして、この「条件付採用期間」は、労基法21条4号の「試の使用期間」に該当すると解されます(注3)。
そうすると、条件付採用期間中の職員を免職する場合には、免職の要件をみたすことはもちろんとして、労基法21条4号との関係も考慮しておく必要があります。それは、こういうことです。
採用後14日以内で、なお「条件付採用期間中」(=「試の使用期間中」)にある職員を免職する場合には、労基法21条4号により、原則として解雇予告も解雇予告手当も必要ありません。これに対して、採用後14日を超えて引き続き勤務している職員については、条件付採用期間中であっても同号の適用除外はなくなります。そのため、それ以後に免職する場合には、原則どおり労基法20条が適用され、30日前の予告または30日分以上の平均賃金の支払が必要になるということです。ちなみに、解雇予告の日数と解雇予告手当を組み合わせることもでき、例えば20日前に予告した場合には、10日分の平均賃金を支払うことにより30日の不足分を補うことも可能です(労基法20条2項)。
(注2) 地公法22条は一般の職員の条件付採用期間を原則6月としていますが、会計年度任用職員については、同法22条の2第7項により「6月」が「1月」と読み替えられます。
(注3) 昭和38年11月4日基収第6227号は、「試の使用期間中の者」を「本採用決定前の試験的使用期間中の労働者」としていますので、地方公務員の条件付採用期間も労基法21条4号の「試の使用期間」と解釈して差し支えないでしょう。
解雇予告の時期と解雇予告手当
それでは、採用後14日を超えた条件付採用職員を、勤務成績不良等を理由として免職するとした場合、労基法20条・21条との関係で具体的にはどのような対応が必要になるのでしょうか。
まず、免職予定日の30日以上前に、免職する旨を予告する方法があります。この方法をとる場合、労基法20条の予告期間は暦日で計算し、予告した日は算入せず、その翌日から計算することになります。例えば9月30日付で免職するのであれば、30日間の予告期間を確保するためには、遅くとも8月31日までに予告する必要があります。
もっとも、条件付採用でこの方法をとることができるのは、事実上、一般の常勤職員の場合にかぎられます。というのは、一般の常勤職員の条件付採用期間は原則6月ですから、勤務状況をある程度観察した段階で正式採用が相当でないと判断し、30日前に免職を予告することは(困難は伴うにしても)現実的に可能といえます。これに対し、会計年度任用職員の条件付採用期間は原則1月ですから、その間に勤務状況をある程度観察した上で正式採用が相当でないと判断し、30日前に免職を予告するというようなことは現実的に不可能だからです。
そうすると、会計年度任用職員について、条件付採用期間の終わりに免職しようとする場合には、30日前の予告だけで処理することは実務上困難であり、少なくとも解雇予告手当との併用を考えざるを得ない場合がほとんどであると思われます。例えば、免職予定日の10日前に免職を予告したのであれば、30日に不足する20日分の平均賃金を解雇予告手当として支払うことで、労基法20条の要請を満たすというようなことです。この点は、条件付採用期間の短い会計年度任用職員については、特に重要な実務上のポイントではないかと思います。
即日免職の場合の解雇予告手当支払時期
解雇予告を行わない即日免職の場合には、解雇予告手当をいつ支払うべきか、ということが問題になります。例えば、採用後14日を超えた職員について、その勤務状況から「これ以上勤務させることは適当でない」と判断し、直ちに免職するような場合です。
この点について、厚生省(厚生労働省)の解釈指針は、「法20条第1項の即時解雇の場合における30日の平均賃金は解雇の申渡しと同時に支払うべきものである」としています(注4)。この解釈指針に従うと、条件付採用職員を即日免職する場合には、免職処分書を交付して免職を告知する時点で、解雇予告手当を支払うことができるよう準備しておくのが現実的な対応ということになるでしょう。なお、30日前の予告と解雇予告手当を併用する場合にも、即日免職の場合とはやや事情が異なりますが、少なくとも免職日までには必要な手当の支払を確実に行うよう手続を整えておく必要があるでしょう。
(注4) 昭和23年3月17日基収第464号。厚生労働省「確かめよう労働条件」も、即時解雇の場合の30日分の平均賃金は解雇の申渡しと同時に支払うべきものとして紹介しています。
労基法20条に違反した場合の免職処分の効果
最後に、採用後14日を超えた条件付採用職員について、30日前の解雇予告もせず、解雇予告手当も支払わないまま免職処分をした場合、その免職処分の効果はどうなるのか、という問題を取り上げます。
この問題について、民間の解雇に関する事案ではありますが、最高裁は、使用者が30日前の予告も予告手当の支払もしないで解雇を通知した場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないものの、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後30日を経過するか、その後に必要な解雇予告手当を支払った時点から解雇の効力を生ずる、としています(注5)。そして、旭川地裁は、条件付採用期間中の町職員の免職にあたり、30日前の解雇予告がなく、免職通知の際に解雇予告手当も支払われていなかった事案で、この最高裁判決の考え方を前提として、町が当初予定した免職日に固執していたとはいえないとして、免職通知から30日を経過した時点で免職の効力が生じたと判断しています(注6)。
これらの裁判例は、労基法20条違反がある場合、免職は当然に無効とはいえないとしても、その効力発生時期そのものに影響を及ぼす可能性があることを示すものです。このことを踏まえると、実務上は、採用後14日を超えた条件付採用職員を免職する場合には、免職処分の実体的な適法性だけでなく、免職予定日から逆算して、解雇予告と解雇予告手当の処理をあらかじめ検討しておく必要があるといえるでしょう。
(注5) 最高裁昭和35年3月11日第二小法廷判決(民集14巻3号403頁)。
(注6) 旭川地裁平成30年3月6日判決(労働経済判例速報2343号24頁)。
おわりに
本稿では、条件付採用職員を免職する場合の労基法20条・21条の適用について、特に解雇予告・解雇予告手当の時期という観点から検討しました。
ポイントをまとめると、地方公務員の条件付採用期間は労基法21条4号の「試の使用期間」として取り扱われますが、解雇予告が不要なのは、原則として採用後14日以内に限られます。そして、この14日は実際に勤務した日数ではなく暦日数です。したがって、採用後14日を超えて条件付採用職員を免職する場合には、原則として30日前の予告、30日分の解雇予告手当、または両者を組み合わせた対応が必要となります。特に、条件付採用期間が原則1月である会計年度任用職員については、勤務実績を見てから免職の判断をする以上、30日前の予告のみで処理することは難しく、解雇予告手当の支払が必要になる場面が少なくないと思われます。
なお、小稿は、学術論文ではなく、あくまで個人的な研究ノートとしての雑記・雑文です。したがって、論点を網羅するものではありませんし、注なども最低限のものにとどめています。また、個別事案への適用については、具体的事情により結論が異なり得ることにご留意ください。